温かい前菜(entrée chaude)は、冷たい前菜に比べると作るのに少し難易度が上がります。ゲストが食べるタイミングを見ながら、出来立てを提供する必要があるためです。
しかし、タイミングが難しい分、食卓で待っている時の期待感はその分上がります。特に秋から冬にかけて作りたくなるパイ料理は、焼き色を少し強めにつけるとさらに食欲が増します。
今回は、以前お伝えした「アントレ」の温かい前菜編です。
四季を通じて提供できますが、寒くなる時期からが食べたくなるカテゴリーです。揚げ物系やパイ生地などを使ったものが定番ですが、フグの白子や仔牛の胸腺を使った内臓系もあり、個人店では特に料理長の好みが反映されます。
1 卵のアントレ
温かい卵料理は、実は難しく温度管理がポイントになります。フレンチスタイルのウッフ・ブルイエ(œufs brouillés)は、基本湯煎で作ります。ゆっくり加熱することでトロトロに仕上がります。トマトソースなどが合います。
2 野菜のアントレ
洋風天ぷら的なベニエ(beignet)は、泡立てた卵白をサックリと混ぜ合わせる、ややコツがいる衣です。いんげん、トマト、キノコなどを使います。以前tempuraと称して出している海外のお店もありました。
3 魚介類のアントレ
ムール貝のマリニエール(moules marinières)はポテトフライを添えるのが定番です。エビのグリエ(crevettes grillées)は、先にオリーブオイル、ハーブ、ニンニク、スパイスでマリネしておくと焼いたときに香りが引き立ちます。
4 肉系のアントレ
フォアグラをポワレ(foie gras poêlé)するのは、比較的新しい調理法で以前はテリーヌが主流でした。いまでは定番の温菜で、リンゴのソテーなど焼いたフルーツとも相性が良いです。またシンプルにソーセージなどを焼いてジャガイモのピュレを添えるのでも成立します。
5 チーズを使ったアントレ
カフェメニューの定番クロックムッシュー(croque-monsieur)は耳を落とすなどしてサイズを小さくして提供します。チーズスフレ(soufflé au fromage)ベシャメルソースができれば、あとはオーブンが焼いてくれます。ハムを入れると更に美味しさアップ。
逆算して準備する
冷たい前菜に比べて、作り置きができない為に、出来立てを提供する必要があります。しかし一から作りはじめるのではなく、食べる時間から逆算して準備をします。前菜なのですぐに提供できることが前提ですが、時間が少しかかる旨を伝えていくのも大切です。先ほどお伝えしたように、寒くなる時期から食べたくなるので季節感も考慮しましょう。
温め直しても良い
今回は【フレンチ前菜「アントレ」を作るための季節を味わう5つの食材カテゴリー~温かい前菜編】についてお伝えしました。
提供タイミングが難しく、どこまで仕込んでおくかがポイントになります。しかし、自宅などに招待しておきながら、作るのに忙しくてゲストとの会話ができないかもしれませんね。その時は、キッシュロレーヌなどを当日早めに作り、直前に軽く温め直すことでもいいでしょう。
自宅で楽しむフレンチで大切なのは、ゲストと共にその場を楽しむことです。多少冷めてもいいので、出来立てに近い形で一緒に食べれる方法を考えることが大切ですね。