コキヤージュ(coquillage)は、ムール貝、ハマグリ、アサリ、カキ、ホタテ貝など食用の貝を指します。フレンチでは、前菜を中心に主に魚料理の一部として貝料理がメニューに出ています。
また、ブラッスリーの海の幸の盛り合わせ(plateaux de fruits de mer)には、色々な種類の貝がのせられています。
今回は、コキヤージュをはじめに知るうえで欠かせない、2つの食材とその基本の調理法をご紹介します。酒蒸しと焼くが基本になり、加熱しすぎないことがポイントです。
ムール貝とマリニエール
フレンチの貝料理で合わせて覚えたいのが、ムール貝のマリニール風(Moule à la marinière)です。漁師風や船乗り風などと和訳されますが、貝類が豊富なブルターニュ地方の郷土料理です。
また世界遺産で有名なモンサンミッシェル付近で養殖されているムール・ド・ブッショは小粒ですが味の濃さは大粒の物よりも、食べごたえがあります。ご自宅用ではネットなどを通じて購入できます。
マリニエールという調理法はムール貝に限らず、アサリやハマグリなどの二枚貝を下処理するときに良く用います。白ワイン蒸しと和訳されますが、使う材料は多く、みじん切りにした玉ねぎ又はエシャロット、刻んだパセリ、タイムやローリエ、辛口白ワイン、白ワインビネガー、バターを加えて蒸し煮します。
出てくる煮汁をこしてスープやソースのベースにします。また、加熱しても口が開かないのは、鮮度に問題がある事が多いです。食べる時は注意してくださいね。
ホタテ貝とポワレ
日本人に向いているホタテ貝のシンプルな調理法はフライパン焼きのポワレ(poêler)です。フライパンで表面にきれいな焼き色がついたホタテ貝は、ソースが無くても特有の香ばしさと甘味を感じることができます。
火加減は強火ですが、フライパンの周りから煙がもくもく出てきたり、ホタテ貝を入れた瞬間の焼く音が大きかったら、強すぎのサインです。その辺は調整してくださいね。
バケツ山盛りのムール貝が非日常
ムール貝と言えば、バケツ型の容器一杯に山盛りにされ、フライドポテトと共に提供される光景をフランスではよく見かけました。食べるコツは、片方で食べたムール貝をピンセットのように持ち、身をはさみながら器用に食べます。
実際に手は汚れますし、付け合わせはフライドポテトのみ。白ワインで流し込みながらひたすら山盛りのムール貝を食べ続けます。不思議と飽きることはありませんでした。夏のテラスで食べる解放感と、昼から酒を飲む非日常が私には心地よく感じ、バケツ一杯のムール貝はあっという間に殻のみとなったことを思い出します。
一番新鮮な食材がお客さんへの返事
当時私が在籍していたフランスのレストランでは、ホタテ貝は間違いなく殻付きで入荷していました。朝一で届くホタテ貝を担当セクションの見習が下処理を行います。時間内に荷物が届けばまだいい方で、お昼の営業中に届いたときは、ホタテ貝を開けながら直ぐに使いますので、狭い厨房はそれはもうてんやわんやの大騒ぎです。
セクションを超えての人海戦術で乗り切ることも数知れず…「メニューにも書いてあるので前日のうちに翌日のランチ分くらいは、入荷しておいてもいいのではないか?」と、一度聞いたことがありました。
「その日に入った一番新鮮な食材を使うのが、俺の店を選んできてくれるお客さんへの返事なんだよ。わかるか?」口調は荒くても表情が穏やかなそのシェフの働きぶりは、今でも脳裏に焼き付いています。
シンプルな調理法ほど気遣う
今回は【フレンチレシピ貝料理「コキヤージュ」を知るための2つの食材とシンプルな調理法】についてお伝えしました。
ムール貝やハマグリなどは、白ワインでまずは調理してみましょう。白ワインを軽く振り入れて蓋をして貝が開いた順に取り出せば、身が固くなるのを防げます。煮汁は煮詰めてバターとレモン汁を少し加えれば素晴らしいソースになることでしょう。
ホタテ貝も同様に火の入れすぎには注意してください。固くなった、コキヤージュは、なんとも言えない残念で硬い触感になります。シンプルな調理法ほど気遣いをするのは貝も一緒です。ぜひ試してみてくださいね。