シェフとはどんなイメージでしょう?
定番では腕を組み、高い帽子をかぶり、イケメンもしくは美人で、多少メタボでも許され、出た腹に前掛けがかかり良く似合う。さらに最近ではミッキーもいれば、マッチョで全身タトゥー、さらには給食も作ってしまう…現代のフレンチのシェフ像をデフォルメするとこのように描かれます。
料理好きのおじさん?
もちろん、ドラマや映画に出てくるような、劇的でインパクトのある生き方やキャラクターを持っている人は中に入るかもしれませんが、少なくとも私が今まで師事してきたシェフ達は、もっと地に足がついた方たちが多かったです。
仕事を着実に行い、一緒に働くスタッフのことを家族のように想い、大切に接していたシェフ達を多く見てきました。営業中は、怒鳴り散らしたり子供のようにワガママで、手が付けられないほどでしたが、営業が終わればただの料理好きのおじさんに戻ります。
今回は、そんな愛すべきシェフの主な仕事内容についてお伝えします。
実際のシェフの仕事は多岐にわたり、自身がオーナーシェフか雇われシェフかでも大きくその仕事範囲は異なります。ここでは、その2つのタイプの共通する仕事内容を3つピックアップします。
1レシピやメニューを書くこと
単にレシピやメニューを書くと言っても、おいしそうな料理名を考え、盛り付け方を決め、どの皿を使うのかを選び、食後感を満たせる分量を決める…などの仕事に広がります。
もちろん、厨房設備とスタッフの能力や席数も頭に入れて、安定して提供できるものを考える必要があります。独りよがりのメニューやレシピは、結局自分の首を絞めることを一番理解しています。
2仕入れ先や食材仕入れルートを確保すること
似たような調理技術で同じメーカーの調理機器を使っているところは多く、なかなか差別化を図ることが難しい今。希少で安全な食材を、安定的に安く仕入れることができるか否かに意識が向けられています。
まだ誰も使っていない個人で営んでいる取引先を、見つけることができるアンテナを張り続けるのも仕事です。良い食材はそれだけでも料理が半分以上できていることを意味します。シェフは少し手を加えて食べれるように加工するだけです。
3原価管理を行うこと
お金の管理がずさんな店は、ことごとく潰れていきました。自分ではきちんと管理できているつもりでも、レシピやメニューの原価と実際の値付けが、店の雰囲気と格に伴わない為に閑古鳥が鳴くこともあります。
仕入れる食材のバランスが悪いために毎月の棚卸を圧迫し、過剰在庫を抱えているケースもあります。どんなに腕が良くても、一人分の野菜の付け合わせの原価がいくらかを、把握していないようでは務まりません。先に紹介した、1と2に関して最終的にこの原価管理にもリンクします。
ケンカの仲裁役も仕事範囲?
滞りなく料理を提供するためのオペレーション構築や、若手料理人の人材育成と技術指導などは、もしかしたらお店や組織形態によって直接シェフ自ら行わない所もあります。それらを行うのは実際には、薫陶を受けた2番手あたりかもしれません。
また、厨房では鼻っ柱が強い若い料理人同士が時には喧嘩をするときもあります。言い争いレベルなら様子を見ていますが、取っ組み合いになり誰が止めても収まらない時は、シェフの出番です。シェフの仲裁には不思議と素直に従います。
それはシェフという役職だからではなく、人格や料理センス、お客さんを喜ばせること、店を支える人への接し方など、普段の行いを見ているからです。気が強い若手料理人も素直にさせる、オーラのようなものも必要な能力なのでしょう。
地に足がついたシンプルな日常
今回は【シェフは映画やドラマに描かれているような華やかな仕事内容なのか?その裏舞台に迫る。】についてお伝えしました。
シェフは料理に関することはもちろん、お客様に挨拶をしたり、時には店の外に出てレッドカーペットの上を歩いてマスコミのインタビューに答えるのも仕事かもしれません。
そんな華やかな裏側には、店の看板メニューを支えてくれる食材を、毎日納品してくれる肉屋さんの労をねぎらい、ゴミを回収しに来てくれる取引先にはコーラをご馳走して一緒に談笑する姿があります。
誕生日のスタッフにはサプライズを用意して、ばれないように一人でそわそわしていたり…そんな一面もシェフには必要な仕事であることを多く学ぶことができた修業時代でした。
シェフの日常は華やかではなく、毎日の出来事に素直に向き合う、地に足がついたシンプルさということでしょう。