時短料理を扱ったメディアが相変わらず盛況のようです。「何だか手抜きをしている感じがする」そんなことありません。時短と言うキーワードをポジティブに考えると、その言葉に隠された大切な本質が理解できます。
今回は、時短料理で分かる、調理の基本や定番レシピの変わり目について考えてみたいと思います。
今までの調理の基本が通用しない時もある
今では、ネットの情報から得られる料理のコツは探せばいくらでも出てきます。外国のサイトまで検索すれば、さらに世界が広がるのが今の料理。インフルエンサーによる発信や料理が様々な切り口から分解されて、再構築され新しい食のキーワードが紹介されています。
私がこの業界に入った頃は、まだ本や雑誌からの情報しか得ることができなかったため、ごく限られた人からの偏った情報や現場での見聞によって、調理の基本や応用を身に付けていました。しかし「これが基本です」と、当時教えられてきたやり方が、今では変わり、時には通用しないこともあります。
レシピが変わる分岐点
例えば、昔はにんじんの皮を剥くのが当たり前だと教えられてきましたが、今では軽く洗うだけ、皮を剥かないことで、時短を強調しているキャロットラぺのレシピ。漬けるのが当たり前だった豚の生姜焼きは、漬けないでそのまま焼き、後からタレを入れる「新常識」と言う名のアレンジしたやり方。
今まで当たり前とされてきたやり方を見直し、今の時代に合わせたレシピに適応させて、紹介しているのを多く見るようになりました。その裏には、野菜の品種改良、調理科学的根拠の見直しや裏付けによる、レシピの再考が行われています。
今まで常識や基本とされていたやり方が、時短と言う言葉によって見直され、新しい形の基本レシピの分岐点に差し掛かっていることがわかります。もちろん、われわれのライフスタイルの変化や時代背景も大きく影響していることも見逃せません。
基本の先は柔軟性のある料理
今回は「時短料理から読み解く~変わる調理の基本と受け継がれるレシピの本質」についてお伝えしました。
時代と共に料理は変わります。そして調理の基本も、少しずつ変わります。時代に合わなくなった料理は、見直され徐々に淘汰されていきます。必要な要素や本質のみが受け継がれ、その時代に生きる人に受け入れられていくのが、受け継がれる料理です。
基本を理解したうえで、柔軟性のある料理をこれからは作って行くことが大切。「時短料理」と言う言葉は、今だけかもしれません。数年後には言葉は変わっても、本質が変わらなければ、時代に即した時短や手抜きレシピがあっても面白いかもしれませんね。