料理

空き缶ごはんに学ぶ~五感を意識しながら作る大切さ

空き缶で炊いたごはんを初めて食べてみました。

普段の生活の中で空き缶でごはん炊くことは、災害時以外にほぼ100%ないでしょうし、そもそも空き缶で炊く発想がすごいと思います。なんとなく遊び感覚で作ってみたのですが、この空き缶ごはんから学べることがあったんですね。

それは、いつもと違う状況下で行う煮炊きで大切なことは、いつも以上に五感が研ぎ澄まされることです。

今回は、アウトドアシーンで料理を作る際、いつもと違う状況で調理すると、五感がいつも以上に意識できることについて書きました。

視覚~炎の状態

米と水を入れた空き缶を、炭の周辺に配置したら炎の状態を見てその都度、薪をくべます。季節や薪の水分の含み具合によって火加減が難しく、時にはその場で薪を乾かす必要があります。風向きが変わるので、炎の状態に合わせて空き缶の位置を微調整します。

当たり前ですがキッチンの火力レバーと違い、なかなか思う通りにはならない炎を操るのは容易ではありません。こちらが炎のご機嫌に合わせて、使われている状態です。

聴覚~調理中の音

そうこうしているうちに、飲み口を丸めたアルミで封をしている隙間から、わずかに泡が噴出してきます。輻射熱に注意しながら耳を近づけると、薪のはぜる音に交じって、空き缶の中からグツグツ煮える音がわずかに聞こえてきます。

その音を確認したら、炎の状態を見ながら空き缶の位置を調整し、中身が焦げないようにします。調理中の音で判断し火加減を調整するのは、『強火・中火・弱火』では、表せられないリアルな火加減です。

音で調理中の食材の状態を判断し、次にどういう展開にするのかを考える大切さを再確認しました。よく言われる、『食材の声を聴く。』『食材と対話する』とはこのことでしょうか。

触覚~ごはんの感触

待つこと20分弱。直感、経験、炎の状態を見極めて出来上がりを判断します。未知の空き缶ごはんの、できあがり基準がピンときませんでしたが、空き缶の焦げ具合と時間感覚で判断したら大丈夫でした。

サバイバルナイフで空き缶を開けます。グローブをはめて天地に切れ目を入れて広げるのはまさにアウトドアです。包丁ではなくサバイバルナイフを差し込むときに、右手に伝わる感覚が初めての触感です。

空き缶を切る時の感覚。サバイバルナイフの刃先が炊き立てのごはんへ触れた時の感覚。右手にもつナイフから伝わるごはんのやわらかさの感触で完成したのを知ります。薪を拾い、火をおこし、やっと辿り着いた達成感を感じます。

嗅覚~様々な香りに包まれる

開けると炊き立てのごはんの香りが立ち上がります。思ったよりも、なかなかの上出来で、お焦げ加減も最高です。香りは、食欲をさらに増します。

薪の香り、森の香り…様々な香りに包まれ、炊き立てのごはん香りは一瞬で周囲を包み込みます。それを逃さぬように、出来立てに鼻を近づけるのが許されるのが、自分の手で仕込んだ料理だからこそ。作り手の特権です。

味覚~バリエーション豊かに

ちなみにですが、この時はバリエーションを加えるために3種類のキノコをみじん切りにしてお米と一緒に混ぜて炊いてみました。

キノコを入れているので少し水加減を調整し炊いてみたところ、きのこの味が染み込んで味も丁度良く仕上げることができました。白いごはんも良く炊けてその食べ比べもできました。混ぜることで一緒におかず代わりになり、道具や手間も減らすことができます。

限られた環境下でできること

五感を使って、今の状況下で出来ることを考える。『あれがないと出来ない』『いつもの食材がないとつくれない』の類は、アウトドアシーンでは通用しないでしょう。むしろ、限られた調理環境下で温かい料理を屋外で作れて、それを食べれることだけでも贅沢なことです。すべてではありませんが、その考え方は、日々の料理にも十分参考にできるのではないかと思います。

皆で火を囲み、皆で食材を分かち合い、皆と一緒に食べて一体感を増す…これが料理で生まれるコミュニケーションの醍醐味です。五感をフル活用したアウトドアクッキングでは、そんな多くの料理の基本を見つめ直すことができる絶好の機会だと再認識しました。

レシピの枠を超える自然体の料理

今回は【空き缶ごはんに学ぶ~五感を意識しながら作る大切さ】について、書いてみました。

いつもと違う環境だけでも、味の感じ方が変わります。さらに、五感を意識して作るだけでもワンランク上の出来栄えになります。

アウトドアにはいつもよりも、自然体の料理を作ることができるそんな力があります。大げさかもしれませんが、レシピの枠を超え、作る人の持ち味をいかせるのが良いとことかもしれません。