料理教室

お互い気にかけることで生まれる料理コミュニケーション

グループレッスンで大切なことは何でしょうか?

特に大切にしていることが、相手とのコミュニケーションです。もちろん技術的なことや味に関することも大切です。しかしそれらと同じくらいにコミュニケーションも必要です。

日々のごはんは、1人で作ることが多いですが、ここ料理教室のグループレッスンではお互い有意義に過ごせるように、参加者同士のコミュニケーションが欠かせません。

相手への気配りが大事なのでそれらにわずらわしさを感じる方は、料理教室でコミュニケーション力が自然と身に付くきっかけにもなると考えています。なによりも同じ食卓を囲む仲間意識ともいうのでしょか。それによって一層味わい深い料理にもなります。

お互い声を掛け合いながら自然な流れで進行

先日のレッスンでも、いつも通っていただいているNさんとSさんは当教室の勝手を知っているので、こちらが何も言わなくても、エプロンを身に付け、手を洗い準備万端です。しかし、体験レッスンで初めてのKさんは、当然ですが何からしていいのか分かりません。

もちろん体験の方には、初めに私の方からもレッスンの流れを説明します。しかし初めての場所なので、まだまだ緊張している様子でした。レッスンが始まると、二人は道具の場所や次に何をすればいいのか要領をつかんでいるので、動きにも積極性があります。

Kさんにも多くのことを体験していただきたいと考え、あれこれ調理の一部をお願いしてみました。しかし、それがちょっと逆効果でした。後で聞いた話では、「いきなり仕事を振られたので、頭が真っ白になった」とおっしゃっていました。これには私も反省です。

もう少し様子を見てから、徐々に慣れていってもらうためのステップが必要でした。しかし、慣れているNさんとSさんが上手にフォローしてくれます。『これお願いできます?』『こんな感じでいいですか?』と自然な流れで一緒に盛り付けが始まりました。理想の流れになったので、私の出番はありません。

レッスン中に話すワンポイントをお互いに確認し合ったり、終始和やかにレッスンは進みました。体験のKさんもレッスン中盤より緊張がほぐれてきた様子で何よりでした。

困っている様子に気が付き自然と体が動く


調理師専門学校では調理実習台を囲んで行いますが、ある学生が、真鯛を焼く際にその後必要になる、調理道具の準備を忘れていました。焼くことだけに意識が集中していました。

真鯛がそろそろ焼きあがる間際になって、慌てているようです。私が「バットは準備してある?」と聞いた瞬間に、その様子を見ていたある一人の学生が、とっさに引き出しからバットを取り出してくれました。

私がいるからではなく、その学生が困っている様子に気が付いて、自然と体が動き準備してくれました。また、学生同士でメモ見せあい、私が口頭でその都度変更した分量や時間を確認し合いながら、実習を進めている様子も良く見かけます。

ここでも同じように私が答えればその場ですぐに解決しますし、直接質問しに来る学生もいます。しかし学生同士で考えながら行うことが、その後プロの現場に入った時のコミュニケーションにも、役に立つのではないかと考えています。

それでも解決できていない様子や明らかに間違った方向に行きそうな時は、こちらがそれを察知することが必要です。

あえて見守るのも仕事のうち

今回は【お互い気にかけることで生まれる料理コミュニケーション】について書きました。

レッスン生同士、お互いに助け合い、声を掛け合って料理を完成させる姿を見ていると、レッスンを通じて生まれる料理コミュニケーションは見ている私も優しい気持ちになります。

誰が上手下手ではなく、デモンストレーション中に一生懸命メモしたレシピを確認し、聞き逃したところはレッスン生同士で確認し合う姿があります。

確かに私に聞けば、すぐに答えやより良い方法は見つかるのは分かっているはずです。しかしあえてそれをしないのは、テーブルを囲んで料理を作る者同士にしかわからない仲間意識かもしれません。そんな時はあえて見守るのも私の仕事でしょう。